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イボジーの逆襲

『イボジーの逆襲』  

レジェンド野村

 これは巨悪帝国に立ち向かう1人の英雄の物語である。世界はすぐにキレる人種キレジー族の国家に支配されていた。暗黒のキレジー時代と言われる世は、いまだに続いていた。地下組織の革命軍は何度か武力蜂起するのだが、そのたびに圧倒的な兵力で潰されていた。

 

 キレジー族はちょっとでも気に入らないことがあるとすぐにキレてしまう。昔、地球上を支配していたアングロサクソン族の国USAは呆気なく滅ぼされてしまった。USAがキレジー国に対して経済制裁すると、それだけでキレたキレジーたちは、核ミサイルを発射し、わずか3日でワシントンやニューヨーク、ロサンゼルスなど主要都市を制圧してしまった。

 

 キレジーたちは、続いて中国を支配下におさめ、次にヨーロッパ、アジア、アフリカと、地球上を次々と支配下におさめたのである。キレジーの大勝利である。すぐにキレることが正義だった。すぐにキレて先制攻撃することで世界の覇権を握ることができたのである。ひとたび攻撃を開始したら徹底的に叩き潰すことがキレジー国の正義だった。反撃できないくらい叩き潰しておかなければ、キレジーたちは気が済まなかった。というのも、どこかで反撃を受けるかもしれないという恐怖があった。キレることの裏には、恐怖の影がついているのだ。

 

 キレジー族は、大量殺戮を繰り返した。キレたら殺すというのが彼らの行動原理だった。気に入らない人間はすべて殺すのである。「キレジー族以外は人間にアラズ! 射殺してヨシ!」ということになっていた。だから、キレジー族以外は、どんどん人口が減少していった。

 

 キレジー族以外の種族はみなキレジー族の顔色をうかがいながら、ビクビクして暮らしていた。なにせ、気に入らなかったら殺すわけだから、真面目にルールを守って生活していても、「お前、気に入らないから殺す」といって射殺されるのだった。一見、理不尽と思える社会だったが、キレジー族の間では正当化された正義だった。

 

 民族浄化という論議である。優秀な種族だけが残り、劣勢遺伝子を死滅させたほうが、人類は繁栄するという考え方だった。大量虐殺の理由をそう論じていたが、実際は反撃を恐れて殺すのだった。キレジー以外はすべて抹殺したいというのが本音だった。大量に殺すとしても、何億という人間を殺すには時間と費用がかかった。

 

 キレジー以外の人間には明日の希望がなかった。キレジー族にとっては天国かもしれないが、それ以外の種族にとっては地獄だった。いつ死ぬかわからない時代だった。

 

 そこで、あらわれたのが、イボジー族のオヤジーである。イボジー族は、平穏な性格で怒りという感情をうまく有効活用できる特別な種族だった。

 

 性欲や抑えられない衝動をスポーツに向けて成功した人々のように、イボジー族は、怒りが湧き上がったときそれを愛する行為に移すためのエネルギーとして使うのだった。

 

 70代のオヤジーには、政治は理解できなかった。貧しい自給自足生活だった。キレジー族に支配される世になっても、さほど危機感はなかった。国際ニュースなど見ないし、友人と政治の話をすることもなかった。オヤジーの住む瀬戸内海の小島には、関係のないことだった。

 

 オヤジーに関心があったのはSXだった。70歳をすぎても毎朝逸物は屹立していたし、肉体は常に鍛えていた。ベッドに入ると20代の若者にも負けないだけの体力と技術を持っていた。

 

 オヤジーには師匠がいた。30年前に他界したが、いまでもオヤジーは師匠の教えを守って、指と腰と舌の訓練は欠かさない。右手の中指と薬指は訓練のために異様に肥大しマメが無数にあった。ただ、そのマメが女性器を刺激して昇天させるテクニックとなるのだった。

 

 オヤジーの腰は1分間に1000回のピストン運動にも耐えることができた。もちろん、ローリング運動も高速で回すことができた。それでも、息切れひとつしない体力を有していた。

 

 オヤジーの舌は最高のキスを演出することができた。オヤジーとキスした女性たちはとろけるような快感を味わい、白目をむいて失神するほどだった。オヤジーの舌はキスだけでなく、女性器や体の隅々まで快感の泉を湧き上がらせる魔法を持っていた。ソルボンヌ大学医学部脳神経科のテンガ教授が分析したところによるとオヤジーの唾液には女性の脳細胞を刺激する特別なホルモンが分泌されているということだった。オキシトシンの100倍の多幸感を味わうとのことだった。これも、おそらく師匠から受け継いだ訓練の賜物だった。

 

オヤジーの師匠の教えには3つの精神論があった。

1つ、死ぬ氣で愛されろ!

2つ、骨のズイまで愛されろ!

3つ、誰とでもHするけど愛されろ!

この3つの精神論を毎朝、大きな声でオヤジーは唱和するのだった。

 

 そして、師匠が死ぬ前にオヤジーに言い残したことがある。遺言といってもいい。オヤジーはこの遺言を片時も忘れたことがない。師匠と二代にわたって成し遂げる壮大な夢だった。ロマンだった。早朝、太陽が昇る東の空に向かって、この遺言を叫び、拳を握る。そのとき、毎回、オヤジーは滂沱の涙を流す。

 

その遺言とは

「お前は、世界一の不倫王になれ!」というものだった。

「ワシは不倫王になる!」

瀬戸内海の小さな島の岩の上に立ち、オヤジーは叫ぶ。そして、大粒の涙を流すのだった。

 

 オヤジーは、裸になって海に飛び込み、今日も、訓練に余念がない。海のなかでセックス・ミサイルをしごき、腰を高速で回転させることから訓練がはじまる。その後、20数種の訓練設備があった。

 

 オヤジーに続いて弟子たちも裸になって海に次々と飛び込む。100人の弟子がオヤジーのもとで修行していた。この島で訓練を受けた戦士たちは、世界のキレジー族の国々に散らばって、命をかけた革命に邁進するのだった。

 

 彼らのことをキレジー帝国に抵抗する地下組織は敬意を持って「NTR軍団」と呼んだ。その秘密基地が瀬戸内海の小島にあった。

NTR軍団」の掟はただ1つ。

「寝取り(NTR)のできない者には死を!」だった。

「お前、死ぬ氣でやれ!」

というのが訓練中に言うオヤジーの口癖だった。

「遊びじゃねえんだぞ。勃起時の角度が足りん! もっと立てろ! 死ぬ氣でやれ!」

「舌をもっと長く出すんだ! 死ぬ氣でやれ!」

「腰が砕けてもいい、死ぬ氣でやるんだ!」

そんなふうに、オヤジーは弟子たちを叱咤する。

 

 この秘密基地が設立されるきっかけは3年前のことだった。核弾頭を搭載したミサイルよりも、肉棒ミサイルのほうが効果があることを気づかせる出来事があったのだ。キレジー帝国に抵抗する地下組織の人々が、その出来事によって、オヤジーに注目したのである。

 

 オヤジーは世界一の不倫王になるにはどうすればいいかを考えた。そのためには、世界一の男の女房を寝とらなければいけなかった。世界一の男とは誰だ?

 

 キレジー帝国のケチャップ大王だった。ケチャップ大王の身辺警護は24時間体制で近づくことはできないが、ケチャップ夫人は、さほど難しくなかった。というのも、ケチャップ夫人は部類のH好きで、夜な夜なコールボーイを呼んでいたのだ。街で男を拾ってハニートラップにかかるよりも、信頼できるスジから男を派遣してもらったほうが安心だと考えたからだ。

オヤジーはそのスジのコールボーイになり、ケッチャプ夫人と1夜をともにすることになった。ケチャップ夫人は、ナイスボディの美女だった。そして、欲求不満を抱えていた。毎日、誰かに抱かれていないと眠れないという異常性欲者だった。依存症だったのかもしれない。夫がかまってくれない寂しさも抱えていたようだ。ケチャップ夫人の心の隙間にオヤジーはスルリと入り込んでいった。

 

 オヤジーは毎日ケチャップ夫人のベッドへ呼ばれた。ベッドの上で2時間3時間とたっぷりとオヤジーは奉仕した。さまざまな技術を駆使した。ケチャップ夫人が昇天するワザは3つ。「ローリングサンダー・ミサイル」「オキシトシン100倍キッス」そして「さざなみピストン」だった。ワザの内容はここでは語らない。次の機会があれば、そこでたっぷりと公開しよう。

「あなた、ホントに70代なの?」

 ケチャップ夫人は不思議そうにオヤジーを眺めた。4回イッたあとでも、オヤジーの肉棒は屹立している。鍛えているだけあって、4回くらいでは萎んだりしない。1晩じゅう高速ピストンしても耐えられるだけの体力を持っていた。

「ワシは、世界一の不倫王になったど!」

 とオヤジーは心のなかで叫んだ。

 

 ことが終わると、2時間くらいピロトークをした。そこで、オヤジーはケチャップ夫人から重要な情報を聞き出したのである。

 1つは、ケチャップ大王が短小、包茎、早漏の3重苦に悩んでいるということだった。この情報が世界に拡散されたことでケチャップ大王の権威が失墜し各地で暴動が起こり、キレジー内部からのクーデター事件へと発展した。残念ながらそのクーデターは大王軍によって鎮圧された。

 2つは、奥様たちはキレジー族でも本当はキレるのが嫌だということだ。キレジー族であることを証明するためにも常にキレていなければいけないのだが、キレたあとはかなり疲れるのだという。キレたくないのにキレなければいけないというのは、地獄なのだとケチャップ夫人は語った。

 そして、3つめの秘密が最も重要な情報である。この情報によって「NTR軍団」が創設されたのである。

その秘密とは何か?

 

 キレジー族はHを繰り返すうちに、いつしかイボジー族と同じような性質になるというのだ。つまり、穏やかで平和的な性格になるのだ。イボジー族の地下組織では、この現象のことを「イボジ覚醒」と呼んだ。

 

 ポイントはHの回数なのだが、その回数は人によって違う。ケチャップ大王のように3重苦で、ほとんどHしない者は、死ぬまでキレて生きるしかないのだという。実はキレジー族のほうが劣勢種族なのだ。イボジー族はキレジー族よりも進化した種族だった。そのことはキレジーの遺伝子研究で解明されたことなのだが、ケチャップ大王の命令で厳重にトップシークレットとなっていた。

 

「本当は誰も戦争なんかしたくないし、誰も殺してほしくない。なのに、なんで戦争や殺戮が起こるんだろうね」

とケチャップ夫人は言った。

 

 大事なのはHだという情報が即座に地下組織のリーダーたちの耳に入った。Hをしまくったキレジー族の女が平和的な性格になったらどうなるか。そして、キレジー族の男のなかからもイボジー覚醒した者があらわれたらどうなるか? 

 世界平和が実現するのではないか?

 

 世界一の不倫王になるという目的を達したオヤジーはコールボーイを引退した。故郷の瀬内海に戻ったとき、地下組織の徴募スタッフがオヤジーに接触してきて、NTR軍団の設立を聞かされたのである。1年遅れてNTR軍団のなかに女性軍も創設された。

 

 オヤジーは今日も、屹立した肉棒を握りしめて、世界平和のために弟子たちの訓練を見守るのであった。

NTRが世界を救うのだ!」

 裸で訓練する弟子たちを眺めながらオヤジーは、逸物に力を込めるのであった。瀬戸内の海は凪ていた。太陽の光が島なみの向こうの海を輝かせていた。

 

 

(了)

 

 

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コメント: 3
  • #1

    桑山 元 (木曜日, 09 4月 2020 17:40)

    このバカバカしさ、大好きです。
    話の運びや方向性も僕の好みです。
    なので話が似てしまいました(笑)

    一番サクサク読めた作品かもしれません。
    サクサク読めるのは僕の中ではかなり重要な点です。
    1分間に1,000回のさざ波ピストンが羨まし過ぎます(笑)

  • #2

    叶彩乃 (金曜日, 10 4月 2020 12:00)

    まず、世界観がすごい!と思いました。イボジとキレジ、聞いただけでも注目するのに、それに~族をつけるなんて、それだけで笑ってしまいます。世界観が独特な分、説明部分がちょっと多くて、もう少し登場人物の会話があるといいかなとちょっと思いました。

  • #3

    龍ひかる (水曜日, 15 4月 2020 18:55)

    こんにちは、私もオヤジーの元、イボジー族のNTR軍団に入隊したいです。
    世界平和を不倫で解決する人間性こそが武力行使ではなく暖かい人の温もりで繋がるという結末に共感致しました。
    リアル性がないからこそ引き込まれる世界観には勉強させられました。
    私もズバ抜けた世界観を描いてみたいと思いました。
    凄く楽しめました。
    ありがとうございます。