刑事ものや探偵もののテレビドラマや映画は、
「サスペンス」とか「ミステリー」というジャンルで紹介されることが多い。
だから、「サスペンス」とか「ミステリー」というと、
刑事ものや探偵もののジャンル名だと勘違いしている人が多い。
今回は、この2つの効果について解説しよう。
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■本来の言葉の意味を理解しておこう!
この言葉の本来の意味は、こうだ。
「サスペンス」とは、ある状況に対して不安や緊張を抱いた不安定な心理のことを言う。
この心理状態が、読者に「次にどうなる?」という疑問を抱かせるのだ。
「ミステリー」とは、「謎」「不可思議」「神秘的」という意味だ。
不思議なことが次々と起きて、読者は好奇心を刺激されて夢中で読み進めていく。
殺人事件では、読者は
「どうやって、やったの?」「なぜ、やっとの?」
という疑問が浮かんでくる。
「次にどうなる?」というサスペンス効果と、
「どうやって、やったの?」というミステリー効果は、
物語をおもしろくする源泉だと言っても過言ではない。
要するに「謎」だ。
「次にどうなるの?」と「どうやって、やったの?」という2種類の謎が、
小説に入っていると、おもしろくなりますよ、ということだ。
小説を書くうえで、「謎」は、読者を物語の世界へ引きずり込むために、
必要不可欠な要素だ。
だから、小説を書く人は「謎」を理解し、自由に使いこなせるようにすると、
小説を書くのが、いまより10倍楽しくなるだろう。
■単純に謎を設定すればいいというわけではない。
たとえば、ハリー・ポッターのような魔法が登場する物語は、
次から次へと、不思議なことが起こる。
不思議な人物や物が次々と出てくる。
だから、読者は
「次はどんなことが起こるの?」とか、
「他にどんなキャラクターが出てくるの?」とか、
「魔法道具や家具や小物など、今度はどんな変なものが出てくるの?」とか、
さまざまな疑問を持つだろう。
この疑問は、「サスペンス効果」によるものだ。
そして、不思議なものが登場したとき、
「どうして、こんなことが起こったんだろう?」とか、
「このホウキは、どういう法則性があって空を飛ぶんだろうか?」とか、
「この不思議なスポーツは、どうやって試合をやっていくんだろう?」とか、
不思議なことを解明したくなるだろう。
この好奇心は「ミステリー効果」といえる。
「サスペンス効果」と「ミステリー効果」が盛り込まれている小説は、
読者は次を読みたくてしょうがなくなる。
読者は眠気も忘れて朝まで読んでしまうだろう。
ただ、ここで、注意していただきたい。
それは、単純に不思議な出来事を起こしたり、
不思議な人物や小物を登場させればいいというわけではないということ。
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■「謎」の効果を最大限するにための3つの方法
●方法1/登場人物たちがなぞ解きに動くこと。
伝統的な物語だけでなく、現代でも多くの小説で使われている「謎」がある。
それは、登場人物の出生の秘密だ。
ハリー・ポッターでも、この「謎」が使われている。
冒頭、ハリーは孤児として伯母夫婦の家で暮らしている場面からはじまる。
ある日、突然、ボグワーツから入学許可証が届く。
そこで、自分が魔法使いの息子であることを知る。
ストーリーは、まさに、ハリーの出生の秘密が軸になって進んでいく。
ハリーは、自分の出生の秘密を知りたくて行動する。
自分が何者かを知るために、危険な場所へ行くし、怪しい人にも逢いにいく。
つまり、主人公を動かす動機が、自分の出生の秘密を探ることに設定されている。
先に、
「単純に不思議な出来事を起こしたり、
不思議な人物や小物を登場させればいいというわけではない」
と言ったが、その他に何が必要かというと、
まさに、なぞ解きに主人公が行動しなければいないということだ。
読者の頭のなかに謎や疑問が浮かんでも、
それを解明するために何か行動を起こさなければ、
その謎や疑問は消えてしまう。
消えてしまうと、小説の次を読みたいという好奇心もなくなってしまうのだ。
●方法2/謎の答えをじらす。
サスペンス効果やミステリー効果によって、
読者のなかに謎や疑問が生まれても、
その答えをすぐに公開してしまうと、
読者は次を読もうというモチベーションを失ってしまう。
だから、ときどき、「この物語は、ハリーの出生の秘密を探るお話なんですよ」と、
読者に知らせる必要がある。
主人公に、そのことを言わせるという方法もあるし、
脇役たちとおしゃべりするときの話題にしてもいい。
そして、少しずつヒントを出していくのだ。
たとえば、ハリーの出生時に予言が告げられていたことが明らかになる。
「お前は、闇の魔法使いヴォルデモートを倒す宿命を負っているのだ」
と誰かに言われる。
すると、新たな謎が生まれてくる。
なぜ、ハリーが、そんな宿命を負わなければいけないのか?
ハリーが生まれたとき、魔法界に何があったのか?
ハリーの両親は誰に殺されたのか?
その謎が、また、次を読ませるわけだ。
ヒントはポツリポツリと、宝探しみたいに、いたるところに散りばめてある。
ハリーが魔法界で「生き残った男の子」と呼ばれていることもそうだし、
両親の幻影が登場して、ハリーへ忠告することもそうだ。
ハリーの額には、稲妻型の傷がついているのだが、
これはヴォルデモートがつけたことなども、
少しずつ明かされていく。
ヒントはいろいろ出すが、肝心な答えは、なかなか出さないこと。
そうやってじらすことで、読者はよけい好奇心をかき立てるのだ。
●方法3/謎の答えは明かさなくてもOK
大衆向けの小説はハッピーエンドの物語が多い。
しかも、じらしていた謎の答えを、最後はすべて明らかにする。
読者は、何も考えないで、スッキリとした爽やかな読後感を持つことになる。
しかし、これとは対照的に、純文学作家たちは、
できすぎた結末やハッピーエンドは「リアリティに欠ける」といって敬遠する。
謎も、未解決で曖昧なまま終わらせることもしばしばある。
脇役の人物にしても、英雄なのか、悪魔なのか、最後までわからなかったりする。
小説において、そういうことは、どちらでもOKなのだ。
■すべての小説になぞ解きの要素がある。
推理小説はまさしくなぞ解きがメインの核となっている。
殺人事件が発生し、「犯人は誰なのか?」という大疑問が生まれる。
この大疑問の答えを解くために、刑事やら探偵やらが登場する。
大疑問の他に、
「密室から、どうやって外へ出たのか?」とか、
「どうやって殺害したのか、その方法は?」とか、
「犯人らしき人物のアリバイは崩れるのか?」とか、
さまざまな小疑問が生まれてくる。
そして、優秀な人物が、そのなぞ解きをしていくのだが、
必ず、間違った推理をする脇役の存在がある。
シャーロック・ホームズでいえばワトソン君。
名探偵コナンだったら、探偵の毛利小五郎。
謎を考察していく段階が終わり、推理が完成したとき、なぞ解きがはじまり、
結論が出たところで物語はシャンシャンシャンと終わっていく。
犯人は逮捕され、犯人の動機も、アリバイも、殺害方法も、すべて答えが出て終わる。
このプロットは、
推理小説に限らず、多くの小説で採用されている。
そもそも、説明文の「疑問」「考察」「結論」という基本のプロットなのだから。
ハリー・ポッターだってそうだ。
ハリーの出生の秘密が生まれるのが「疑問」の部分。
疑問を考察するために、いろんな行動をとり、いろんなことを知っていくのが「考察」。
そして、さまざまな謎が明かされていくのが「結論」だ。
すべての小説を「疑問」「考察」「結論」というプロットにあてはめて読んでみて欲しい。
かなりの作品が、このプロットで書かれている。
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■まとめ
「疑問」「考察」「結論」というプロットは、
説明文に使われる構成テクニックだが、
このように、小説にも使われていることが理解できただろうか?
ということは、ちょっとしたコラムや記事なども、
このプロットは使えるということでもある。
文章を書くとき、このプロットを意識してみて欲しい。
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