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主人公との距離感をつかむ方法

主人公との距離感をつかむ方法

 

小説を書き始めて、まず、つまずくのが、主人公との距離感を、

どうとればいいかだろう。

 

主人公の視点で書くべきはずの小説が、いつの間にか、作者の視点になっていたり、

主人公の心理がちっとも反映されていなかったり、

読んでいて、ちっとも主人公に感情移入できなかったりする。

 

感情移入できなければ、感動も驚きもない。

 

これでは、マズイ!

 

では、どうすればいいか?

 

作家塾のメンバーで、主人公との距離感がつかめていない人を見つけると、

私が必ず教える技法がある。

 

この技法で書く練習をすれば、

自然と、主人公との距離感をつかめるようになるし、

主人公の気持ちに作者がすんなり入っていける。

 

まるで、自分のことを語るように、主人公のことが語れるようになる。

 

 

それが、「スカース」という技法だ。

 

 

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■スカースという技法を使うとうまくいく!

 

 

「スカース」というのは、

ロシア語で「喋っているように感じられる一人称の語り」のことを意味する。

 

いうなれば、本来、セリフみたいな心のつぶやきを、

「  」(かぎかっこ)でくくるべきところを、

「  」(かぎかっこ)でくくらずに、地の文として書いていくというやり方だ。

 

見本をみたほうがわかりやすいだろう。

 

文学技法にロシア語の名前がついているくらいだから、

ロシア文学にその見本がたくさんある。

 

ゴーゴリーの『狂人日記』にこんな文章がある。

 

従僕が扉をあけると、

令孃はまるで小鳥のようにみがるにひらりと馬車から降り立たれた。

ちよつと右左を御覽になる、その度ごとにお眉とお眼がちらほらと……。

ちえつ、なまんだぶ、おれはもう助からん、金輪際、助かりつこない! 

それはそうと、なんだってまたこんな雨降りにお出ましになったんだろう! 

なるほど、これで、女ってものはどこまでボロキレに眼がないかってことがわかる。

 

令孃はおれには気がつかれないようだった。

それにおれの方でもわざと、なるべく深くマントにくるまるようにしていたのだ。

何しろ、おれのマントはひどく汚れてはいるし、それに型がいたって旧式だからなあ。

今は襟の長い外套がはやっているのに、おれのは襟が短かくてダブルになっており、

生地だってまるきりゆのしがしてないんだ。

 

 

どうだろう?

まるで、誰かに話しかけるような文章になっているのがわかるだろう。

 

 

 

 

■マーク・トウェンがこの技法をさらに進化させる

 

 

ロシア人たちが、頻繁に使っていたこの「スカース」という技法を、

アメリカの作家マーク・トウェインが上手に進化させている。

 

『ハックルベリィ・フィンの冒険』の冒頭はこうなっている。

 

みんなは、おいらのことなんか、知らねえだろう。

『トム・ソーヤの冒険』っていう本を読んだことがなかったならな。

だが、そんなことはどうだっていい。

あの本を書いたのはマーク・トウェインという人で、

あのおじさんの言ったことは、本当のことだ。だいたいはな。

いくつかは、ホラを吹いているところもあったが、だいたいは本当のことを言っていた。

だが、そんなことは、大したことじゃねぇ。

おいらの見たところ、誰だってウソをついてるんだ、一度や二度はな。

 

 

こんなふうに話し言葉で、語りかけるように文章が書いてあると、

読者は一気にその世界にのめり込んでしまう。

しかも、主人公の人間性や考え方や生い立ちなどが手に取るように理解できる。

 

この技法は、口語的な語りのリズムもいい。

だから、どんどん続きを読んでしまう。

スゴイ技法なのだ。

 

 

 

 

■サリンジャーがこの技法を使ってベストセラーになった!

 

 

1951年に出版されたJDサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』は、

「スカース」技法を使って書いてある小説で、世界的に大ヒットした。

 

1980年にジョン・レノンを射殺した犯人のマーク・チャップマンは、

警察が到着するまで歩道に座って『ライ麦畑でつかまえて』を読んでいたという。

 

さらに、1981年にロナルド・レーガンが射撃されたとき、犯人のモーテルに本書があった。

1989年に女優のレベッカ・シェイファーを射殺した犯人のポケットにも本書があった。

そんな事件があったせいか、『ライ麦畑でつかまえて』は、世界中でベストセラーになった。

 

この本はティーンエイジャーの孤独な心の叫びを延々と書き綴っていて、

「スカース」技法によって、その心の叫びが読者の胸にビンビン響く。

孤独を感じている現代人の声なき声を代弁しているといってもいいだろう。

 

作家は、その時代の代弁者になることが重要なのだ。

それを強調するためには、この技法がぴったりだった。

 

『ライ麦畑でつかまえて』から、少し引用するので、

「スカース」技法がどんなものか、読み取っていただきたい。

 

と、突然、ロビーの反対側に誰か知り合いの阿保がいるのが見つかった。

よくある濃いダークグレーのフランネルのスーツを着て、

これまたよくあるチェックのベストを着た奴だ。

まるっきっりのアイビー・リーグ。

大したもんだよ。

壁際に立って、煙草を死ぬほどふかして、最高にタイクツって顔してる。

 

サリーは何べんも「あの人、ぜったいどこかで会ったわ」と言った。

サリーといると、どこへ行っても、ぜったいどこかで会った奴が出てくるんだ。

じゃなかったら、どこかで会った気がする奴。

 

 

 

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■まとめ

 

「スカース」技法がうまくマネできない人は、

一度、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んでみるといい。

 

読んでも、なかなかこの技法で文章が書けないという人は、

書き写してみるといい。

 

初心者の人は、

一度、この技法で、小説を書いてみることをおススメする。

 

 

 

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