■作家によってスタイルはさまざま
原稿用紙5枚から10枚ほどの
短い小説を書くときには、さほどの準備は必要ないが、
100枚を超える小説を書くときには、十分な準備が必要となる。
準備の仕方は、作家によってさまざまなスタイルがある。
出来上がった小説と同じくらいの量のあらすじを書いてしまう作家もいる。
あらすじや人物の相関を図表にする作家もいる。
創作ノートだけでなく、大きな模造紙を壁に貼っておく作家もいる。
登場人物たちの履歴書を作成したり、
アイデアや場面設定、状況設定、人物が話すジョークなどを
創作ノートに書いておく作家もいる。
思いついたことを何でもいいから書き留めるアイデア帳を持ち歩く作家もいる。
作家によって準備はさまざまだが、絶対に外してはいけない共通点がある。
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■基本のアイデアをしっかりと持つこと
小説を書くとき、作家は、最初に、何を思いつくのか?
ストーリーを思いつくのか?
テーマを思いつくのか?
人物を思いつくのか?
たとえば、「おもしろいジョークをふんだんに盛り込んだ小説を書いてみよう」というアイデアを思いつくこともある。
実際、田中康夫のデビュー作『なんとなくクリスタル』は、奇抜なアイデアがあった。
頭が空っぽな女子大生がブランド物を身につけて歩く小説だが、
新語や流行語、ブランド名や地名や固有名詞が実名でふんだんに登場する。
しかも、それらを丁寧に442か所も注釈をつけている。
こういう小説はそれまでになかったので、文壇で話題となった。
「クリスタル族」という流行語まで作った。
売り上げは100万部を超えた。
たとえば、ヘミングウェイの『老人と海』はどうだろう?
ヘミングウェイがカリブの島でのんびり魚釣りをしていたときに、
ふと島の人たちの話を小耳にはさむ。
「じいさんがよ。でっかい魚釣ったらしいんだわ。でもよ。持って帰るときに、サメに食われてちまってよ。浜についたときは、骨だけになってたってよ」
「へえ。おったまげたなぁ」
ヘミングウェイは、その話を聞いて、「これはおもしろい!」と思ったのだろう。
その日から一気に『老人と海』を書き上げる。
これは、おもしろいストーリーを思いつくパターンだ。
カミューの『異邦人』はどうだろう?
実存主義という哲学にはまっていたカミューは、実存主義に生きる人間とは、
どのような人間なのか、いろいろと考えたはずだ。
無気力で無感動で無関心な感情のない人間。
でも、暴力に対しては恐怖を覚えたりするだろう。
母親が死んだらどうだろう。たぶん、泣いたりせず、
普段を同じような生活するのではないか、
そんな人物を主人公にしたおもしろい小説が書けるのではないかというアイデアが浮かんだ。
これは、おもしろい人物を思いつくパターンだ。
いずれにしても、アイデアが浮かぶ。
これがすべての作家の共通点だ。
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■アイデアこそが最も重要!
浮かんできたアイデアは、創作ノートに書き留めておくことだ。
どんなアイデアでもいい。
小説の構成のアイデアが浮かぶこともある。
「主人公が地中に埋められてクビだけ出しているシーンからはじめて、次に、回想シーンに戻して、なぜ、そんな状況になったかを説明していく」とか
「ドラマの『24』みたいに、爆破まであと何分と頻繁に時間を表示していく」とか、
「社会全体の動きと、個人の動きを同時並行で書いていく」とか、
そんなアイデアが先に浮かんだら、それをアイデア帳に書いておこう。
主人公の人物設定でアイデアが浮かぶかもしれない。
「真面目な化学教師が、ガンの宣告を受けて、家族にお金を残そうと考える。そして、ドラッグの製造に手を染めていく」とか、
「夫の作った借金で子どもを育てられなくなったり、突然夫が蒸発したり、そんな崖っぷち主婦たちが4人で銀行強盗する」とか、
「家族全員が変な性癖を持っていて、主人公だけがまとも」とか、
とにかく、おもしろい人物設定を考えたらメモしておくことだ。
舞台設定も、アイデアが重要。
「野良猫が大事にされる島」とか、
「男と女の役割が逆転している村」とか、
「ダサくてモテない男が、その国へ行くとモテモテ」とか、
おもしろいアイデアがあれば巨万の富が手に入る。
アイデアこそが最も重要なのだ!
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■アイデアを引き出すときの3つのポイント
・ポイント1/とにかくメモること
つまらないアイデアでもかまわない。
とにかくメモることだ。
文章にしてみて、はじめて頭のなかが整理される。
頭が整理されると、次のアイデアが出てくる。
整理しないと、堂々巡りになって、次のアイデアが出てこないのだ。
・ポイント2/組み合わせること
AとBを組み合わせると、新しいCが生まれる。
うなぎと犬を組み合わせて、赤塚不二夫は「うなぎ犬」というキャラクターを作った。
「エヴァンゲリオン」は「ガンダム」と「聖書」を組み合わせてるように見える。
1200万部以上売り上げ、いまなお売れ続けている『ノルウェーの森』は、1960年代の日本の雰囲気のなかで、ロストジェネレーションと実存主義を組み合わせて物語を構築している。
・ポイント3/一番あり得ない設定を考えること
ディズニー映画の製作スタッフは、常に「一番あり得ない設定」を考えているのだという。
人物も舞台も展開も、一番あり得ない設定を考えていく。
2人組の刑事を設定するときも、生真面目な刑事とふざけた刑事をコンビにするとか、
真面目で正直な人物が犯罪に手を染めていくとか、
とにかく、あり得ない設定を考えていけば、小説はおもしろくなる。
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■まとめ
とにかく、アイデアが最も重要。
小説を読んでいて、「このアイデア、スゴイな」と思ったら、すぐにメモることだ。
いろんな小説を読んで、アイデアを盗むのだ。
そっくりそのまま盗んでしまうと、つまらないものになるので、
それに他のアイデアをプラスして新しいものを生み出す。
だから、アイデアをいっぱい持った者の勝ちなのだ。
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品田 (火曜日, 14 8月 2018 23:42)
お世話になっております。
アイディアの件、勉強になります。
私の場合は、布団に入って寝る直前に、アイディアが浮かぶので、枕元にスマホを置いておき、完全に眠る前に、何とか起きてアイディアを書き込んでいます。