· 

サピエンス全史

なぜ人類が地球上の覇者となり、これからどこへ行こうとしているのか?

 

『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社)

 

テレビ朝日の人気番組『アメトーク』の、

読書芸人特集で話題になったことで、

日本でも火がついたようです。

 

『サピエンス全史』は、全世界で500万部を越えるベストセラーになりました。

 

この『サピエンス全史』に何が書いてあるのか、

本書のなかから、いくつかの名言を引用しながら、

 

「なぜ人類が地球上の覇者となり、これからどこへ行こうとしているのか?」

という疑問に答えてみたいと思います。

 

 

 

■なぜ、ホモ・サピエンスが増加し、ネアンデルタール人が絶滅したのか?

 

ネアンデルタール人が絶滅したのは、約3万年前です。

ネアンデルタール人はホモ・サピエンス(人類)よりも、大柄でたくましく、

体毛が毛深くて氷河期の寒冷な気候にもうまく適応していました。

 

ネアンデルタール人は、約2000万年近く、生き延びていたのです。

そのころ、ホモ・サピエンスは、まだ少数の種でした。

 

10万年前には、少なくとも6つのヒト科の種が暮らしていました。

そのなかに、ネアンデルタール人もホモ・サピエンスもいたのです。

 

現在、生きている人間のDNAのなかに、ネアンデルタール人の遺伝子を持った人がいるといいます。

そのことから、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが交尾していたことは確かなようです。

 

しかし、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスがともに子孫を残し、

共存する道を歩んでいたら、ネアンデルタール人は絶滅しなかったはずです。

 

なぜ、ネアンデルタール人が絶滅し、ホモ・サピエンスが繁栄したのか?

 

容易に想像できることは、資源や土地をめぐる競争が高じて、

暴力や大量虐殺につながったということです。

 

おそらく、1対1で戦ったら、ホモ・サピエンスに勝ち目はなかったでしょう。

1010でも、ネアンデルタール人のほうが強いはず。

 

しかし、1000人規模になると、ホモ・サピエンスのほうが圧倒的に強くなるのです。

 

ネアンデルタール人は、1000人規模の集団で行動することはできません。

バラバラに動き、混乱を招くだけで、簡単に粉砕されるのです。

 

一方、ホモ・サピエンスは、多数の個体や家族、集団を結び付ける「神話」という接着剤を作り上げることができました。

 

「この接着剤こそが、私たちを万物の支配者に仕立て上げたのだ」

と著者は語ります。

 

ホモ・サピエンスは、地縁や血縁のない他部族間でも、協力し合うことができました。

それは、神話のおかげです。

 

強い種よりも、協力し合う種が生き残ったということです。

 

 

 

スポンサード リンク

■農業革命がもたらしたものとは?

1万2000年前に農業革命が起こります。

それまで、250万年の長きにわたって人類は「狩猟採集」の暮らしをしていました。

 

地上の覇者となった人類は、安定した暮らしを求めはじめます。

 

農耕は人類に安定をもたらしてくれると信じていましたが、

狩猟採集の暮らしほど安定していませんでした。

 

農耕社会は、ごく最近まで、カロリー摂取を主要食品だけに依存していました。

多様なものを食べていた狩猟採集民にくらべて、

偏食する農耕民は感染症に苦しめられます。

 

さらに、雨が降らなかったり、イナゴの大群が襲来したり、穀物を菌類が冒したりすると、

農耕民は何千から何百万という単位で命を落としていったのです。

 

労働時間も増えました。

狩猟採集の暮らしでは、1日に3時間程度の労働で生きていくことができましたが、

農耕の暮らしは、雑草を抜いたり、水を運んだり、虫や菌による被害、外敵から守るために、

常に目を光らせていなければいけません。

 

過酷な労働に苦しめられることになったのです。

 

おまけに、農耕民は所有物が多く、栽培のための土地を必要としました。

土地を奪い取られたら生存が脅かされます。

 

したがって、農耕民は戦わなければいけなかったのです。

部族間での戦争も起こりはじめます。

 

農業革命は、個にとっては、過酷な運命を強いることになりましたが、

ホモ・サピエンスという種全体の数を増やすということでは、大いに貢献しました。

 

人口が爆発的に増加するのです。

 

 

 

 

■産業革命がもたらしたものとは?

農業革命のあとにくる、大きな変革として「産業革命」を忘れてはいけません。

イギリスは、「産業革命」によって手に入れた強力な武力と技術力で地球上の4分の1を征服しました。

 

当時、中国にもそれだけの技術力はあったと著者は言います。

しかし、中国は他国へ調査に行ったとしても、

そこを征服しようという野望は持ちませんでした。

 

中国人になくて、イギリス人にあったもの、

それは、好奇心と欲望だと著者は言います。

 

イギリス人は征服したインドのことを歴史から文化や風俗まで、インド人よりも多くのことを知り尽くしました。

その知識があったおかげで、少数のイギリス人で、1億ものインド人を手なずけることができたのです。

 

欲望を刺激したのは、お金を求める資本主義でした。

イギリス人は利益を求めて、インドから中国、オーストラリアへと触手を伸ばしていったのです。

 

ところが、産業革命のせいで、人間をも、機械のように扱うようになりました。

 

複雑な感情を持っている生き物を機械のように扱うと、

身体的不快感ばかりでなく、多大な社会的ストレスや心理的欲求不満を引き起こす可能性が高まります。

 

アメリカの心理学者ハリー・ハーロウの研究によると、サルの赤ん坊は、ミルクだけでなく、情緒的な絆を求めることがわかりました。

 

サルの孤児たちは、必要な栄養をすべて与えられていたにもかかわらず、

成長後に、情緒障害の症状を見せます。

 

孤児たちは、サルの社会に溶け込めず、他のサルたちと意思を疎通させるのが難しく、

 

不安と攻撃性のレベルが高かったというのです。

 

 

 

スポンサード リンク

■資本主義経済がもたらしたものとは?

資本主義経済は、泳いでいなければ窒息してしまうサメのように、

存続するためには、たえず生産を増大させなければいけません。

 

生産を増大させるためには、常に消費を拡大しなければいけませんので、

消費者には借金してまで、モノを買わせようとします。

 

豊かな人々は、細心の注意をはらって資産や投資を管理しているのに対して、

裕福でない人々は、必要のない自動車やテレビを買って借金に陥るのです。

 

富める者の戒律は「投資せよ!」

それ以外の人々の戒律は「買え!」です。

 

資本主義と消費主義の価値体系は、このように表裏一体なのです。

 

帝国主義が隆盛を極めていたころ、富を求めて、他国を侵略し植民地にしました。

植民地から得られる鉱物や産物などが莫大な富をもたらし、そのことで戦争が起きたのです。

 

石油をめぐって、戦争が起こり、多くの人々が死んでしまいましたが、

今後、太陽光などの自然エネルギーが石油にとってかわると、

戦争で得るものが少なくなります。

 

戦争は採算の合わない事業になったのです。

 

ひと昔前までは、富は農作物や鉱物など、土地から得るものでした。

 

ところが、現在、世界の大企業に躍り出ているFacebookGoogleや、ハリウッドの映画会社などは、

土地の制限を受けることはありません。

 

 

つまり、現在の富は、人間の頭のなかにあるのです。

 

 

 

スポンサード リンク

■ギルガメシュ・プロジェクトとは?

 

種の数が爆発的に増加すると、人類は、次に何を求めるようになるのでしょうか?

 

多くの権力者が求めて得られなかったものです。

不老不死です。

 

『サピエンス全史』では、古代シュメールのギルガメシュ神話を紹介しています。

 

ウルク王のギルガメシュは、戦さにかけては無敵という、

世界で最も強力で有能な権力者です。

 

ギルガメシュは、親友が亡くなったとき、その鼻の穴からウジ虫が出てくるのを見て

 

「自分は絶対に死ぬまい」と決意します。

 

何とかして、死を打ち負かす方法を見つけようと世界の果てまで旅をします。

ライオンを殺し、サソリ人間たちと戦い、黄泉の国へと足を踏み入れます。

 

しかし、目的を果たせずに空しく故郷に帰るのです。

 

そこで、ギルガメシュは、

「人間は、その宿命の下で生きていかなければいけない」ことを学びます。

 

 

ところが、現代科学は、このテーマに果敢に挑戦しています。

 

心臓が不規則になったらペースメーカーで刺激したり、

新しい心臓と取り換えたりして、生きながらえます。

 

ガンが猛威をふるったら、医薬品や放射線で退治するのです。

 

おかげで、私たちに寿命は飛躍的に伸びました。

 

いつの日か、死神すら打ち負かすことができるのではないかと、誰もが期待を寄せています。

 

これを、著者はギルガメシュ・プロジェクトと呼んでいます。

 

 

現在の技術は、絶滅したネアンデルタール人やマンモスを映画『ジュラシックパーク』のようによみがえらせることが可能です。

 

事故で失った腕にバイオニック・アームを取り付けることも可能です。

 

人間の脳とコンピュータを直接結ぶことも、近い将来、実現するでしょう。

 

人間の顔を持ったライオンとか、馬とか、違った生命体を作ることも可能です。

実際、牛の軟骨細胞から作った耳を背中にはやしたマウスを誕生させることに成功しています。

 

おとなしくて、繁殖力の高い家畜を作りあげることができたのですから、

従順で優秀な人間を作って労働者にすることも可能なはずです。

 

「倫理上の問題がある」とブレーキをかける人もいるでしょうが、

科学者らは、こうしたプロジェクトを中止することはありません。

 

こうしたプロジェクトは、ギルガメシュ・プロジェクトと結びついていますし、

「私たちは病気を治癒し、人命を救うためにやっているのだ」といえば、

誰もこれを止めることはできないのです。

 

 

■まとめ

 

本書を読み終えて、新たな疑問が生まれてきました。

 

それは、

「人類は、いったい、どこへ向かっているのだろう?」

ということです。

 

もしも、神様がいるとしたら、神様は、私たちに何をさせようとしているのでしょうか?

 

現在、地球上には70億ちかい人間が暮らしています。

全員を巨大な秤に乗せたら、その総重量は3億トンになります。

 

牛や豚、鳥などの家畜を乗せたら、その重量は約7億トンになるそうです。

 

一方、野生の動物たちは、1億トンに満たないといいます。

 

人間と、人間に必要な動物だけが地球上に暮らすようになってしまったようです。

 

もう、後戻りはできません。

 

もしかすると、この地球上には、殺し合う種が滅び、協力し合う種だけが生き残るのかもしれません。

 

平和な時代が続くと、攻撃的な人間がどんどん少なくなり、

菜食で愛に満ちあふれた人間だけが暮らすようになるのかもしれません。

 

そんなことを思いつきました。

 

人類が、どこへ向かっているのか?

この本を読んで、ぜひ、あなたも考えてみてください。