『ノルウェイの森』(村上春樹)に学ぶ小説の書き方

■『ノルウェイの森』はリアリズム小説

 

村上春樹さんは、毎回、長編小説を書くとき、

「新しいことに挑戦する」ようなことをインタビューで言っています。

 

 『ノルウェイの森』はリアリズム小説に挑戦したわけです。

 

…………..インタビュー記事を抜粋…………………….

 

「羊をめぐる冒険」と「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は、

ただただ楽しんで書いた。

そして、「ノルウェイの森」を書くときは、

ここでリアリズム小説を書かないと、

もう一つ上の段階に行けないと思った。

 

僕としてはそれなりにうまく書けたが、

実験的だと思っていたものがベストセラーになったことで、

ストレスやプレッシャーを感じた。

 

「ねじまき鳥クロニクル」では重層的な世界をつくるという新しい試みをしました。

 

………………………………………………………………………

 

 『ノルウェイの森』が出版されたのは1987年9月4日。

世界中で翻訳され、

これまでに1000万部を越える大ベストセラーとなりました。

 

 村上春樹さんの5作目の長編小説になります。

 

 『ノルウェイの森』以前は、ファンタジー小説ばかりでしたから、

ここらで、ひとつ、リアリティのある小説を書いてみせようということだったみたいです。

 

 

 

■『ノルウェイの森』の冒頭に謎が挿入されている!

 

 書き出しの1文はこうです。

 

………………………

 

 僕は三十七歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた。

 

………………………

 

 主人公の僕が、ドイツのハンブルグ空港に到着するところから、

物語がはじまります。

 

 そのとき、飛行機のBGMでビートルズの「ノルウェイの森」を聴き、

激しい混乱を覚えるのです。

 

 ドイツ人のCAがやってきて「大丈夫?」と尋ねます。

 

 このドイツ人CAとこんなやり取りをするのです。

 

…………………………………..

 

「大丈夫です、ありがとう。ちょっと哀しくなっただけですから」

と僕は言って微笑んだ。

「そういうこと私にもときどきありますよ。

よくわかります」

彼女はそう言って首を振り、席から立ちあがってとても素敵な笑顔を向けてくれた。

 

………………………………………..

 

この冒頭のシーンで、読者の心はつかまれます。

こんな疑問が浮かんでくるからです。

 

(1)37歳の男が、頭がはりさけてしまいそうなほど混乱するって、どういうこと?

 

(2)18年前に何があったの?

 

(3)タイトルにもなっている「ノルウェイの森」とどう関係があるの?

 

 この疑問に答えるようにして、回想シーンに入り、物語がはじまるわけです。

 

 

 

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■『ノルウェイの森』は複雑に構成してある!

『ノルウェイの森』は、

一見、複雑な物語のように見えます。

 

ユニークな人物が次々と登場しますから、

それらが複雑に絡み合うわけです。

 

主人公「僕」の成長ストーリーとしてみると、

 

高校時代に出会った友人の彼女の直子を捨てて、

大学時代に出会った緑を選ぶ物語としてみることができます。

 

心理学に「移行対象」という言葉があります。

 

幼い子どもがぬいぐるみのクマに愛着を持って、

いつまでも放さないことがあります。

 

あの、クマが「移行対象」です。

 

そして、幼い子どもが「移行対象」であるクマを手放したとき、

人間的に、1つ、大人になったことをあらわします。

 

『ノルウェイの森』の主人公の場合、

直子への想いを断ち切ることが、

大人への成長になるわけです。

 

高校時代、唯一の親友だったキズキの恋人が直子です。

 

主人公とキズキが高校の授業をすっぽかしてビリヤードをした夜、

キズキが自殺します。

 

直子は、そのことで、ずっと心に傷を持ち続け、

主人公を愛することができません。

 

そんな三角関係に主人公は迷い込むわけです。

 

大学で緑と出会い、お互いに惹かれ合うのですが、

主人公は、なかなか直子への想いを断ち切れないでいます。

 

しかし、主人公は、心のどこかで、緑を選んでしまっていました。

 

直子は京都の山奥の療養所に入所し、

そこで自殺します。

 

療養所で直子と同室だったレイコさんが、

主人公のアパートへやってきて、

ギターで『ノルウェイの森』を弾きます。

 

それが直子の葬式だとしたのです。

 

これが、冒頭に出てくる「謎」の答えになります。

 

ハンブルグ空港で機内BGMの『ノルウェイの森』で混乱した理由です。

 

 

この主人公の成長ストーリーを幹として、

ユニークな登場人物たちのストーリーを枝葉にし、

 

大きな大樹を作り上げたのが『ノルウェイの森』なのだといえます。

 

もちろん、村上春樹さんが、『ノルウェイの森』を書く上で、

どのような設計図を描いたのかはわかりませんが、

 

 

この作品はこのような構成になっています。

 

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