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葛藤プロット1

(1)葛藤のプロット1

 

本当なら○○○○したい。しかし、それはできない。

なぜならば○○○○だからだ。

時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。

○○○○○○○○○○○○。(主人公の心情を描写)

周囲が騒ぎはじめた。○○○○○○○○○○○○。(周囲の様子)

私は決めた。○○○○○○○○○○○○。(最終的にどうなったか)

 

 ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 

上記のテンプレートの○○○○のなかに、

適切な言葉を入れるだけで、

 

ショート小説ができあがります。

 

それをふくらませれば、

短編小説になりますし、

 

その他のエピソードをおりまぜれば、

長編小説になります。

 

小説には葛藤が必要です。

 

葛藤にはいろいろな形がありますが、

一番、シンプルな葛藤は、

 

「○○○○したいけど、できない」

 

というものです。

 

願望が先にあって、

その願望が叶わないときに、

葛藤が生まれます。

 

下記に文章例を書いておきましたので、

参考にしてみてください。

 

 

【文章例】

 

本当なら、こんな会社辞めてしまいたい。

しかし、それはできない。

 

なぜならば、時代は買い手市場で転職組はほとんど地獄を見ているからだ。

 

時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。

 

このまま、こんなブラック企業で飼い殺しにされるのだけは嫌だ。

周囲が騒ぎはじめた。

 

同僚や後輩たちが集団で辞表を出すと言いだした。

 

私は決めた。

 

辞表を出す連中と起業するのだ。起業した会社は順調に成長していった。

 

しかし、5年後。

 

その会社の社員たちが「ブラック企業だ」とネットで書きこむようになった。

 

 

 

 

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プロットを理解するには、

事例をたくさん読むことです。

 

下記に、このプロットを使ったショート小説をならべてみましたので、

じっくりと読んでみてください。

 

 

『ファイヤーマン』

 

 本当ならば少女を助けてあげたい。しかし、それはできない。

なぜならば燃え盛る炎がガソリンに引火して、いつ爆発するか分からない危険な状態だからだ。

 

実は液化天然ガスを積んだ貨物車が脱線して、線路横の道を走っていた車がその下敷きになったのだ。

グシャグシャに潰れた車が火を吹いている。

その上にいつ爆発するかもしれないタンクがどんと横たわっている。

 

私が助けに行ったとしても、あの炎だ。それにもし爆発したならば確実に死ぬ。

助けに行くのは自殺行為に等しい。

現場の誰もが歯を食いしばりながら放水を続ける事しかできない程の状態であった。

 

 時間は刻々と過ぎていく。私はどうすればいいんだ。

 

 逃げ遅れた少女が今あの車の中でどれほど心細い思いをしているのであろう。

どんなに怖い思いをしているだろう。私はここでただ黙って見ているだけしかできないのか。

 

私はふと自分の娘の顔が思い浮かんだ。

もしあそこに閉じ込められているのが自分の娘であったなら黙って見ている事が出来るだろうか。

 

自分の娘を助けに行かんと暴れ、仲間に抑えられているあの娘の父と母の悲痛な叫びが僕の背中を強く押した。

 

周囲が騒ぎ始めた。車のガソリンに引火してさらに火が勢いを増したのだ。

 

私は決めた。

 

少女を助けに行くのだ。私は自分の背の何倍もの高さの炎の中に飛び込んでいった。

 

気がつくと、私は担架の上にいた。

そして、私の手の中には少女の重みがずっしりとのしかかっていた。

どうやら助ける事が出来たようだ。

 

「お前、防火帽はどうした?」

ひとりの仲間が心配そうに声をかけてくる。

 

「そうだった」

私は思い出したように腕の中の少女にかぶせた防火帽をゆっくりと取った。

「よかった。この子の可愛い顔に傷がつかなくて」

 

 

 

 

『共犯者』

 

 本当ならここで殺される母を助けたい。しかし、それはできない。

なぜなら、歴史が変わってしまうからだ。

助けてしまえば歴史が変わり、僕は死刑にも匹敵する時代犯罪者となってしまう。

 

 母は僕のいた時代から10年前、この歩行者天国で起きた無差別殺傷事件で、犯人の少年2人組に殺された。

一人は逮捕されたが、その後もう一人は今も捕まっていないらしい。

 

僕はどうしても真実が知りたいと、10年後の未来からタイムマシンでこの時間軸にやってきたのだ。

 

昼の13時34分まであと数分だ。

もうすぐここであの忌まわしい事件が起こる。

 

懐かしい母の姿が僕の目の前を通り過ぎた。

母が倒れていた街路樹まで後数メートルだ。

犯人の少年は怪しい目をぎらつかせ、母の数メートル後ろを歩いている。

私はどうすればいいんだ。

 

周囲が騒ぎ始めた。

犯人が一人目の犠牲者である女子高生に切りかかり、無差別殺人が始まったのだ。

 

私は決めた。

自分の母が目の前で殺されるのを黙って見過ごせる子がどこにいるだろうか。

母が殺される前に犯人を殺すのだ。

 

母に襲いかかる少年に僕は飛びかかった。

そして包丁を持った手を必死で抑える。揉み合いの末、僕は犯人と共に勢いよく地面に倒れた。

 

グサッ! 

何かが刺さるなまめかしい音がする。

「うっ・・・」と女の人が苦しむ声が聞こえた。

なんと包丁が刺さり、血まみれになった母が悲痛な叫びをあげている。

 

僕はその時ハッとした。

犯人のもう一人はまだ捕まっていないという。

 

もしかして、と手がブルブルと震える。僕は怖くなってその場から逃げてしまった。

 

 

 

 

『老愛』

 

本当なら、カヨさんと一緒に暮らしたい。

しかし、それはできない。

なぜなら、私はもう85歳という高齢であり、

彼女と付き合っていることを話せば

息子たちは、財産目当てと勘違いするからだ。

 

時間は刻々と過ぎていく。わたしはどうすればいいんだ。

カヨさんは、決して美人ではない。

むしろ地味なお婆さんという印象をみな受けるだろう。

なぜ私が、彼女に惹かれたのか?

彼女の声や包み込むような笑顔や優しさが

初恋の人にそっくりだったのだ。

 

あと何年生きられるかわからない。

この想いを伝えぬまま死にたくはない。

 

ある夜、息子達が私を老人ホームに入れる相談をヒソヒソとしていた。

私は決めた。

加代さんに告白して、一緒に暮らそう。

 

だが、彼女は私の申し出を聞いたあと、

にっこりと笑って、こう言った。

「ありがとう。でも、やっぱり私達お友達でいましょう」

 

 

 

『5歳の決断』

 

本当ならば明日ボクは保育園に行きたい。しかし、それはできない。

なぜならば「みずぼうそう」ってやつにかかってしまったからだ。

時間は刻々とすぎていく。ボクはどうすればいいんだ。

 

明日は保育園最後の運動会。この日のためにボクはがんばってきた。

ボクは早く治すためなら薬も嫌がらず飲んだし、おとなしくもしていた。

でも赤いポツポツがまだカサブタにならないんだ。

あぁ、明日休んだら、きっと一生後悔するにちがいない。

 

周囲が騒ぎはじめた。予行練習で、ボクがいない場合の、お遊戯の動きを練習し始めた。

 

ボクは決めた。

もう立派なコドモ、年長さんなんだ。運動会はあきらめて潔く休む。

決めた後、涙がいっぱい出た。

 

一年後、小学校初めての運動会。万全の態勢で徒競走のスタートに今立っている。

 

 

 

 

 

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『ゴーストライター』

 

本当なら、私があの、ミリオンセラーになった小説を

書いたということを言いたい。

 

しかし、それはできない。

なぜならば、契約書に、

私が書いたという事の守秘義務がかかれていて、

家族にでも、秘密をばらしてしまったら、

印税をもらえるどころか、

一億円を超える違約金を、払わなければならないからだ。

 

そんなお金はどこにもない。

 

時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。

 

作家がテレビに出る、インタビューを受ける、

時代の寵児となっていくすがたを、私は苦々しい気持ちで見ていた。

 

周囲が騒ぎ始めた。

「作家が小説の内容を知らないようだ」

 

私は決めた。

放送されている、テレビ局に電話し、

洗いざらい全てを明らかにしてやる。

 

 

 

『帰郷』

 

本当なら田舎のある九州に帰って、一人で暮らす年老いた母と一緒に暮らしたい。

しかし、それはできない。

なぜならば私は小さいながらも東京で会社を経営しているし、妻や子どもは都会の暮らししか知らないからだ。

時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。

瞼を閉じると故郷の真っ青な海と潮風、母の優しい笑顔が浮かんだ。還暦を過ぎて故郷が恋しいと思った。

友人に「離れて暮らしていて盆と正月だけにしか会わなければ、ご高齢のお母さんと過ごせる時間はあと数日だよ。」と言われた。

私は決めた。

会社はずっと右腕として支えてくれた男に譲ることにした。

妻とは時間をかけてゆっくり話し合い、母と同居することを快諾してくれた。

息子はもう、成人している。あいつは大丈夫だ。

私は来月、母の元へ帰郷する。

 

 

 

『ツール・ド・東北』

 

本当ならツール・ド・東北に参加したい。

 

しかし、それはできない。

なぜならば晴美も渋沢もそれに参加すると言っていたからだ。

 

晴美とは大学のサイクリングサークルで知り合った。

昨年はまだ就職活動中でエントリーするのはやめた。

 

二人で「来年は一緒に参加しよう」と約束していた。

ところが、今年に入り突然別れを切り出された。そして彼女は「渋沢くんと付き合う」と。

 

渋沢はサイクリングサークルの一つ下の後輩だが、就職活動中のはずである。

 

申し込みまであと一週間だ。時間は刻々とすぎていく。僕はどうしたらいいんだ。

彼女にはもう会いたくない。サークルに行きづらくなったのはあいつらのせいなのだ。

 

周囲が騒ぎ始めた。サークル仲間の山戸から『エントリーしたのか』とメールが来た。同じゼミの向田は気仙沼出身らしく、「一緒にいこうな」と声をかけてきた。

 

僕は決めた。申し込みメールを送信した。

晴美よりかわいい彼女を作って、応援にきてもらうことにした。二人に笑顔で手を振ってやるんだ。

 

 

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コメント: 12
  • #1

    戸部美香 PN 夏来みか (日曜日, 03 2月 2019 19:25)

    『ひきこもり』

    本当なら部屋でずっとビデオでも見ていたい。しかし、それはできない。

    なぜならば今は入学試験前、僕は受験生だからだ。

    時間は刻々とすぎていく。僕はどうすればいいんだ。

    ああ、もう、大学なんて行かなくてもいいし、大人に何てもなりたくない。
    このままずっと部屋に閉じこもり、プライムビデオを見続けるんだ。

    ドッカーン。部屋全体が震度7の地震みたいにゆれた。

    なんだ今の揺れは。僕は決めた。よし、図書館に行って勉強をするぞ。
    ドアをあけた。
    あるはずの廊下はなく目に見えたのは虚無の空間だった。

  • #2

    今井 大輔 PNだいのすけ (月曜日, 04 2月 2019)

    「バスでの出来事」
     
     本当なら立っているおばあちゃんに席を譲りたい。しかしそれはできない。
     なぜならば私の太ももはパンク寸前だからだ。鍛えすぎた。
     終点のバス停まで立っていたら筋肉がブチっと切れるだろう。
     
     時間は刻々と過ぎていく。
     私はどうすればいいんだ。
     あぁ~なんてこった。シルバーシートに座っちまった。前のガキは譲りそうもないしなぁ~私は頭をかいた。
     罪悪感からだろうか冷たい視線を感じるような気がする。言葉では言わないが、皆、私に譲らせようとしている気がする。
     
     私は決めた。席を譲ろう! 
    「おばあちゃんどうぞ」
     そう言い、私は勇気を出して立ち上がった。太ももが痛い。
    「あら? あなたには私が見えるの? 私はこの世にはもういないのよ。ハハハハハハ」
     と言い、おばあちゃんは消えてしまった。
     
     空いた席に園児が「ワーイ! せきがあいた~」と言い座った。
     私の太ももからブチっという音がした。

  • #3

    山口倫可 (月曜日, 04 2月 2019 15:44)

    『サンベリーナの娘』

    本当ならこの国を飛び出して、母のいた世界に行って自分の足で歩きたい。でもそれはできないの。
    なぜなら、父と母が私をこの国の世継ぎを生むことを期待しているから。
    私の母は、おとぎ話で有名なおやゆび姫。つばめの背中に乗ってこの国にやってきて父と結婚したわ。夢に描いた幸せな結婚生活……になるはずだったけど、王子育ちの父は母の苦労を理解できず意見が食い違うことばっかり。二人の間を繋ぎとめてきたのは、一人娘の私の存在だけ。
    これまで様々な言い訳で今まで拒否してきたけど、今年のチューリップ月で父と母が決めた男性と結婚しなきゃならない年齢に達しちゃう。どうしよう、時は刻々と過ぎていく。
    家来たちが国中のチューリップを集めて式の準備を着々と進めてる。

    私は決めた。この、おとぎ話の国から抜け出して、母のいた世界で自由になる!

    一文無しで国を飛び出した私を援助してくれたのは、母に結婚を申し込んだモグラのオジサンだった。私は今、オジサンの勧めで小さな神社と契約して恋愛フェアリーテラーをやっているの。最初は親指ほどしかない私の姿に驚き、奇妙な目で見る人ばかりだったわ。だから、気に入った人の前にしか出ないことに決めたの。でも、それが逆に受けちゃって、神社には毎日遠くから悩める女子たちがやってくるようになって……。

    実は、ここだけの話だけどね、来月にはテレビ出演も決まっているの。

  • #4

    戸部美香 PN 夏来みか (火曜日, 05 2月 2019 00:01)

    『時の女神』

    本当ならおしゃべりをしたい。しかし、それはできない。

    なぜならば私が口を開いてしまうと確実に人が死んでしまうから。

    時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいの?

    口を開けておもいっきりおしゃべりをしたい、このまま永遠に時の終わりまで
    誰とも話せないないのなら、死ねない私だけれど、気がくるってしまう。

    周囲が騒ぎはじめた。ああ、もう限界。私が黙っているのをいいことに、
    すべての悪が私のせいにされる。

    私は決めた。息を吸ってはいて、好きな時におしゃべりをするの。
    それで亡くなる人がいたったかまわない。そう、私は「時をつかさどる女神」
    私のおしゃべりや、呼吸とともに、人は寿命を迎えるのよ。

  • #5

    戸部美香 PN 夏来みか (火曜日, 05 2月 2019 23:10)

    『人生って…』

    本当なら どこにも行きたくない。何も変化したくない。しかし、それはできない。

    なぜならばなにもしなくても体はどんどん大きくなり、色はどんどん赤くなるからだ。
    時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。

    ああ、体が重い。何もしないのにぶくぶく太っていくし、色はどんどん赤くなる。
    何も変わりたくないのにだれか止めてくれ。

    周囲が騒ぎはじめた。「おお、真っ赤で美味しそうだ」と声がきこえてくる。
    美味しそうだなんてとんでもない。1

    私は決めた。ここらか飛び降りてやる。何も動かず、何も変化せず、食べられるのをただ待つなん人生はまっぴらごめんだ。
    「えいっ」
    べしっゃ
    「あっもっと早く収穫すればよかった。これじゃ食べられないねこのトマト」

  • #6

    戸部美香 PN 夏来みか (水曜日, 06 2月 2019 22:57)

    『また会おうね』

    本当ならあなたと永遠に話していたい。しかし、それはできない。

    なぜならば私には、あなたと話す以外にも、仕事やら家事やら用事かあるから。
    永遠に話していたくっても、そうはういかない。でも、話していたい。
    そばにいたい。

    時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。

    あなたから離れて、「またね」なんてどうしていえるのだろう
    時間なんてなくなればいい。ずっと今に閉じ込められていたい。

    周囲が騒ぎはじめた。わかった。もういかないと、いけない。

    私は決めた。「またね、明日があるから」

    「またね」と言ったあの日が、あなたとの最後の瞬間だったなんて。

  • #7

    戸部美香 PN 夏来みか (木曜日, 07 2月 2019 22:29)

    『革命』

    本当なら私は画家として毎日絵ばかり描いていたかった。しかし、それはできなかった。

    なぜならば幼いころから大人たちに
    「画家で食べていくなんてできない。君にはそんな才能は微塵もないようだ。
    もっと実用的なお金になる能力を身につけなさい」と言われ続けたからだ。

    時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。

    毎日、毎日、お金勘定ばかり。確かに家族には、貧しい思いをさせることなく
    むしろ贅沢三昧を味わせてあげられた。

    周囲が騒ぎはじめた。何やら、革命が起き、革命政府はなんと貨幣制度を撤廃してしまった。
    国民全員に、無給で働くことが義務づけられた。

    私は決めた。お金なんて使わなくなったのに金勘定を続ける銀行員なんて、
    ばかばかしいことは辞めた。他にできることがないからという理由で銀行を続ける
    同僚たちを尻目に、画家として生きるため旅に出るのだ。

  • #8

    山口倫可 (金曜日, 08 2月 2019 17:48)

    『勝五郎の嫁』

    今までいっぺんだって嘘ついたことはないんだよ、あたしゃ。
    でもね、本当のこと言ったら、また亭主が仕事もせずに呑んだくれて遊び惚けちまう。

    あー、正直に話しちまいたい、でも言えない。

    いや、決めた。ゆんべあったことは、全部夢だって嘘つこう。酔っ払って帰ってきたんだから、細かいことは覚えちゃいないさ。

    亭主は朝起きると、家中探し回ったよ。そりゃそうさ、あんなもんあたしだって拝むのは初めてで、ゆんべは腰が抜けそうなほど驚いたんだから。絶対見つかんない場所に隠しはしたけど不安でね。とうとう探すの諦めて、全部夢だったって認めた時にはホッとしたよ。酷くガッカリした背中が痛々しくて見てられなかったけどね。

    そいからっつーもん、人が変わったみたいに亭主が真面目に働いて…。

    3年後には大通りに立派な店を構えるまでになったんだ。大したもんだよ。さすがあたしが認めた男だけのことはある。やっぱりあんとき黙っててよかった。

    晦日の晩、こんな俺によく付いてきてくれたなんて労ってくれたもんだから、あたしゃ泣いちまったよ。でね、本当は3年前のあの晩のことは夢じゃなかったんだよって言っちまったんだ。あん時あんたは本当に宝くじ当たったんだよって。一生遊べるほどの金持ちになったんだけど、そんなもん持ったらダメ人間になっちまうと思ってさ。嘘ついて隠して悪かったって謝ったよ。

    そしたらあの人怒りもせず、そうかそりゃおまえが正しいってくれてさ。嬉しかったから、そいじゃ3年ぶりに1本つけるかい?ってお燗して、ハラスを炙って。

    亭主は嬉しそうに、ありがとよ、みんなみんなお前さんのおかげ様だよって、お猪口に口つけたんだけど…。

    「いけねーいけねー、また夢になっちまったら困るから、やっぱりやめとこう」
    だってさ。

  • #9

    戸部美香 PN 夏来みか (金曜日, 08 2月 2019 21:59)

    「遺言」

    明後日に迫った父のお葬式。
    本当なら紅白の横断幕で演出をしたい。しかし、それはできない。

    なぜならばお葬式は黒かグレーか白と決まっていてそれ以外を使うのは
    常識外れと思われるからからだ。

    時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだ。

    「俺のお葬式は赤白横断幕だそ」と冗談などおよそ言うことのなかった
    父の遺言。亡くなったとは言え、かなえてあげたい。

    周囲が騒ぎはじめた。「赤白なんてやめてね。常識のない」と
    叔母たちは当然のごとく反対だ。

    私は決めた。葬儀屋にお願いした。「祝 昇天」と垂れ幕にして、
    赤白の横断幕で飾ってください

  • #10

    戸部美香 PN 夏来みか (月曜日, 11 2月 2019 21:36)

    「Ever After」

    本当ならもう少しだけ待っていたい。しかし、それはできない。
    なぜなら皆を集めて盛大に計画しか私の結婚式が始まる予定だった13時から
    もう8時間も経っているのに婚約者がこないから。
    時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいのかしら。
    結婚式の出席者や司祭が私に何か話しかけてくる。
    誰に何を話されても、何も耳に入ってこない。ただ、悲しいだけ。
    周囲が騒ぎはじめた。彼らは何かにとても驚いているみたい…
    私は決めた。ずっとここにいることを。どんなに周りが変わっても、肉体が滅びた後もここに…
    ずっといることにしたの。

  • #11

    戸部美香 PN 夏来みか (火曜日, 12 2月 2019 21:49)

    『忠犬』

    本当ならここを曲がってあの子の家へ走って行きたい。
    しかし、それはできない。
    なぜならば君が首につないだ紐をグイグイ引っ張るから。
    これではあの子の家へ続く角を右へ曲がれそうもない。

    時間は刻々とすぎていく。僕はどうすればいいんだ。
    わかっているよ。君の言うことを聞かなければいけないってことを
    紐を引っ張る君なしでは僕は生きていけなんだから。
    正直、あの子より君の方が大事で愛している。
    でも、あの子の香りが僕を呼ぶんだ。

    周囲が騒ぎはじめた。
    「バックン。お家に帰りたくないの? もう15分もそこで頑張っているわよ」
    大きなお世話の隣の奥さんが、買い物から帰ってきちゃった。
    するとここで永遠に続く井戸端会議が始まっちゃう。

    僕は決めた。ここに午後中いるのはごめんだ。
    しょうがないから、今日は君に負けとくよ。お家へ帰ろう。

  • #12

    戸部美香 PN 夏来みか (水曜日, 13 2月 2019 22:52)

    『女の約束』

    本当ならもう眠りしたい。しかし、それはできない。

    なぜならば今夜は仲良し4人で女子会なの。
    徹夜で語り明かそうって約束したから。寝てはダメなの。
    時間は刻々とすぎていく。眠い私はどうすればいいの?
    ああ、徹夜しようなんて約束しなければよかった。
    寝不足になると食欲が増して、夜中なのに食べ続けちゃうし、
    だいたいお肌も荒れちゃう。

    周囲が騒ぎはじめた。ごめんなさい、約束守れなかった。
    もう寝るわ。と思ったら、あこがれの佐々木先輩!

    私は決めた。佐々木先輩と過ごせるのなら全然眠くない。
    オールナイトなんてへっちゃらよ。