ちょっとした小説の書き方5つのステップ
ここで、「ちょっとした小説」の書き方を整理してみましょう。
小説を書く前にやるべきことをステップにしてみました。まとめると次の5つになります。
1)ステップ1/ネタを探す
2)ステップ2/困った状況を作る
3)ステップ3/その他の困った状況を考える
4)ステップ4/周囲の状況も考えておく
5)ステップ5/怒りの感情も考えておく
ちなみに、これは「怒りのテクニック」を使った場合の小説の書き方です。他のテクニックを使う場合は、事前に集める材料も変わってきますので、ご注意ください。すべての小説がこの書き方で創作されているわけではありません。
それでは、それぞれのステップについて解説します。
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1) ステップ1/ネタを探す
1) ステップ1/ネタを探す
ネタは自分の興味や関心のあるものを箇条書きで並べればOK
1日の生活を考えてみましょう。あなたが興味を持ったものは何でしょうか? 関心を示したものは何でしょうか?
考えてみましょう。ネタは場所を考えることがポイントです。1つの場所で3つの関心事をみつけるといいでしょう。
私はコンビニエンスストアという場所を考えてみました。そして、その場所で関心のあることを見つけました。次の3つです。
・中国人の店員
・深夜に買い物に来るキャバ嬢
・雑誌コーナー
単純にコンビニへ行ったとき、この3つが目に入ったというだけのことです。ネタ探しというのは、こういうことでいいのです。
これは有名な話ですからご存知ですよね。2004年の11月ころ、作家の有川浩さんは近くの図書館を訪れました。そのとき、壁に「図書館の自由に関する宣言」というプレートが貼ってあったのを目にします。
実際は有川さんのご主人からこの宣言文を教えてもらって見に行ったそうです。それで、有川さんが興味を持ったのです。
そして、有川さんは編集者に次回作のテーマを提案します。編集者と有川さんは盛り上がり「図書館の自由に関する宣言が一番ありえない状況で適用されたらどうなるか」を考えました。つまり、困った状況を作ったわけです。
どんな小説か、もうおわかりですよね。
この小説が『図書館戦争』シリーズです。
2) ステップ2/困った状況を作る
2) ステップ2/困った状況を作る
ここからは創作でかまいません。もちろん、本当にあった出来事でもかまいませんが、そうそうおおしろい出来事があるわけがありませんので、自由に物語が作れるように創作することを学びましょう。
想像の翼を広げましょう!
とにかく主人公を困らせればいいのです。困る状況などいくらでも考えられるじゃないですか。死ぬか生きるかという究極の状況でもいいし、着ていたシャツが破れたという程度の状況でもいいのです。
おもしろい映画はすべて、主人公を窮地に追いやっています。
2013年に大ヒットした映画『アナと雪の女王』もそうでした。興行収入は『ハリー・ポッターと賢者の石』を上回り、アニメ映画として全世界歴代1位になった映画です。
王女エルサは触れたものを凍らせるという魔法を持って生まれました。ところが、8歳のとき、妹アナと遊んでいてアナの顔に魔法をあててしまい、意識不明の状態にさせてしまいます。
これが第1の困った状況です。
そして、エルサとアナをどんどん窮地に追い込んでいきます。
さあ、コンビニという場面で、困った状況を考えてみましょう。
私がすぐに思いついたのは、主人公が尿意をもよおしているという状況です。いかがでしょうか?
もっとセンスのいい状況が考えられると、すぐに文学賞が取れるのでしょうが、ま、そんなことは忘れて、楽しみましょう!
3) ステップ3/その他の困った状況を考える
3) ステップ3/その他の困った状況を考える
第1の困った状況を作ったら、主人公や登場人物たちを次々と窮地に追い込みます。
それが小説の書き方の基本中の基本です。シナリオ教室でも、同じように、「主人公を窮地に追いやりなさい」と講義するそうです。
映画『アナと雪の女王』はどうでしょうか?
第1の困った状況は、エルサの魔法で妹のアナを傷つけてしまうことでした。その後、次々と困った状況が発生します。
・アナは意識を回復しますが、エルサの魔法に関する記憶を失います。
・エルサは自分の力が制御できなくなり、誰とも会わずに生活しなければいけなくなります。
・アナは大好きな姉のエルサが自分を避けることで寂しい思いをします。
・10年後、アナとエルサの両親が海難事故で亡くなります。
・アナが隣国の王子ハンスと結婚すると言い出したことで姉のエルサと喧嘩します。
・人々の前で力を発揮してしまったエルサは化け物呼ばわりされ王国から逃げ出します。
・エルサが力を暴発したおかげで夏なのに王国は氷に閉ざされます。
いかがですか?
これでもか、これでもか、というくらい困った状況が次々と襲いかかっているでしょ。
よくできたおもしろい物語やストーリーというものは、このように最初から最後まで、主人公を窮地に追いやって、追いやって、追いやりまくり、苦しめているのです。
コンビニ物語はどうしましょうか?
主人公はおしっこをしたくてコンビニに入ります。その後、どんなふうにして窮地に追いやりましょうか。考えてみましょう。
・コンビニ店内でトイレを探しますが、どこにあるかわかりません。
・スタッフオンリーのドアの向こうへあるはずですが、「関係者以外立ち入り禁止」とあります。
・店員が中国人でなかなか日本語が通じません。
・キャバ嬢がやってきていきなり中国人店員にタバコを投げつけ喧嘩をはじめます。それでトイレのことが何も言えなくなります。
・他の店員を探そうと店内を歩きますが、棚にぶつかって転倒します。
最後のオチとなる、究極の困った状況も考えておきましょう。
尿意があってコンビニ入りますので、やはり、漏らしてしまうというのが妥当な気がします。しかし、もっと究極の状況はないでしょうか?
ここで、粘って考えるかどうかで決まります。才能が伸びるか、伸びずに才能がないとあきらめるかです。あきらめずに、粘って考えることで、小説がどんどん上達します。考えましょう。考えることです。
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4)ステップ4/周囲の状況も考えておく
4)ステップ4/周囲の状況も考えておく
周囲の状況も事前に考えておきましょう。
ポイントは周囲にどのような人物がいるかということです。そして、その人物がどんな目で見ているのか、その人物が心のなかでどんなことを考えているのか、そういうことを想像します。
コンビニ物語の場合、周囲にいる人物といえば、雑誌コーナーにいる黒縁メガネの学生さんです。そこで、この学生さんの心の声と視線を考えてみましょう。
・学生の心の声「このオッサン、床に転がって何しとるんじゃ」
・学生の視線/軽蔑の視線
他にも登場人物がいます。その人たちの心の声と、視線についても考えておきましょう。中国人店員とキャバ嬢と、キャバ嬢の男と思われるイカツイ兄さんです。
・中国人店員の心の声「陳列棚の商品が散らばってるじゃないの、何やってるのよ。こっちはそれどころじゃないのよ」
・中国人店員の視線/険しい視線
・キャバ嬢の心の声「こっちはいま取り込んでるんだよ。静かにしとけや!」
・キャバ嬢の視線/険しい視線
・イカツイ兄ちゃんの心の声「お前は何ぼのもんじゃい。ここで何やっとンじゃ」
・イカツイ兄ちゃんの視線/険しい視線
5)ステップ5/怒りの感情も考えておく
5)ステップ5/怒りの感情も考えておく
困った状況になると、人は誰でも怒りの感情を抱くものです。次々と困ったことが起きますので、そのポイントポイントで、怒りの感情を主人公に抱かせましょう。
小説を書きながら盛り込めばいいのですが、事前に考えておくとスムーズにいきます。
怒りの感情を考えておくとはどういうことでしょうか?
怒りは、怒りしかありませんよね。
しかし、心のなかでどんな言葉を吐いているか、その場その場で違うはずです。主人公の性格も、そのセリフから読み取ることができます。
生意気な性格なのか、控え目でおとなしい性格なのか、世の中をうがった見方をしている性格なのか、セリフを読めばたいがいわかります。
ですから、心のなかのセリフを考えるときには、その人物の性格を考えておくことです。
その人物の心のなかのセリフを考えていきます。実際に小説を書くときに、そのセリフが変更になってもかまいません。事前に考えておくと、忘れないですみます。
それでは、コンビニ物語に戻します。主人公は世の中をうがった見方をしてしまう性格という設定で心のなかのセリフを考えてみました。
ここで注意しなければいけないことは怒りの声にするということです。怒りが物語をおもしろくするということを忘れないでください。
・コンビニ店内でトイレを探しますが、どこにあるかわからないというときの心のなかのセリフ
「おいおい、この店は、客にトイレを使わせないつもりか? え? 客がトイレを使うことでコンビニがどれだけのデメリットをこうむるというのか。たしかに、みんなが綺麗に使ってくれるわけではないので、汚くなるだろう、トイレットペーパーの消費も多くなるだろう。しかし、そんなケチなことを言っていて商売が成り立つと思うのか、この野郎、オーナー出て来い!」
・日本語が通じない中国人店員に対する主人公の心のなかのセリフ
「マジかよ。トイレはどこにありますか? という簡単な日本語が理解できないわけ? それでよくもまぁ、日本で働いてますねぇ。もしかして、仕事をナメてるの? っていうか、日本人をナメてるよね。いつまでも、謝罪と賠償を要求してるんじゃねぇぞ! この野郎! そもそも、中国人は・・・ま、いいか、これ以上いうと、日中戦争に発展するからね」
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