蝉しぐれの中、下駄を鳴らしてマンションへと急ぐ。アスファルトにたまった太陽の熱はじわじわと上り、陽炎(かげろう)が行人坂の先で揺れ動いている。十六も年下の恋人、龍仁くんと二人だけになれる部屋を借りたのは半年前。アラフィフとなり、夫とのすれ違い生活に疲れ始めたころだった。大円寺の前を通り過ぎながら、八百屋お七の一途な恋に憧れる。熱烈に求めてタガが外れたら私はどうなってしまうんだろう。
「なぁ、あれって本当なのかな?」
ハンスがブシャラ酒を傾けながら言った。
「何の話だ?」
サスピシオが面倒くさそうに聞き返す。ハンスが表情を引き締め、重々しく語りだす。
「かの者、終末の世に現れ、人の最も大切なるものを奪い去る。世を混乱に導きて、この世の
ことわりを破壊する。その後、世界は炎の時代を迎える」
「くだらん。単なる迷信だろ」
私はルイ・アンリ。『モンテスパン侯爵』と呼ばれている。フランス国王ルイ14世の時代に生きた軍人貴族だ。
「こっちよ。こっち」
と、甘ったるい声で蜂須賀峰子は言い、大げさに手を振った。謎の女「蜂須賀峰子」は、僕の憎き上司「有喜川」を地獄に落としてくれた。今日はその報告を兼ねて最寄り駅近くのカフェで会う約束をした。桜の蕾がふくらみはじめた休日の午前だった。だが僕は半信半疑だった。
これは巨悪帝国に立ち向かう1人の英雄の物語である。世界はすぐにキレる人種キレジー族の国家に支配されていた。暗黒のキレジー時代と言われる世は、いまだに続いていた。地下組織の革命軍は何度か武力蜂起するのだが、そのたびに圧倒的な兵力で潰されていた。
「‘うみ’、今日は家内が早く帰って欲しいと言うので早めに帰る事にする。」
そう言い先生は、渋谷のホテルの一室で白いシャツの袖に腕を通しネクタイを締めていた。私は未だベッドの中、裸にタオルケットを巻いていた。
彼の鋭い舌が、巧みに私を攻め立てる。私は崩れかけたケーキのように、かろうじて原型を留めている。まだ一枚も身に纏っているものを脱いでいないというのに、皮膚は彼の舌で絡め取られることを待っているかのようにじっとりと汗をかいている。熱く蕩ける息が頬やかき上げられた髪に吹きかかる。耳たぶからうなじへと這うように進む舌は、ゆっくりと確実に私の蕾をじくじくと疼かせる。ときおり聞こえる、ピチャッピチャッと跳ねる音で脳が痺れ思考能力が鈍りだす。
世界で一番ハードルの低い文学賞です。誰でも応募できますし、誰でも受賞のチャンスがあります。どしどしご応募くださいね~
2019/10/22
今回は芥川龍之介の「河童」です。オンライン読書会にぜひ、ご参加くださいな~~
今回は芥川龍之介の「竜」です。オンライン読書会にぜひ、ご参加くださいな~~